絵本・児童文学研究レポート

絵本・児童文学についての自由研究ブログです

小さな自立心『あまがさ』

『あまがさ』

 八島太郎 作・絵 福音館書店 (1963)

 5~6歳頃から

 

【あらすじ】

 モモは、三つの誕生日に、赤いながぐつとあまがさをもらいました。モモはあまりにうれしくて、暑い日も、風が吹いている日も、かさをさしたくて仕方ありません。しかし、お母さんの返事は決まって「かさは あめの ひまで とっときましょうよ」。

いくにちもたったある朝、ついに雨が降りました。しっかり両手で柄を持って、いつもより、まっすぐ歩きました。お父さんが幼稚園に迎えに来た帰り道も、真剣。これは、モモが生まれてはじめて、あまがさをさした日のこと。そして、モモが生まれてはじめて、お父さんやお母さんと手をつながないで、一人で歩いた日のことです。

 

 

小さな自立心の芽生え

 

 

今回も、『おじさんのかさ』に続き、かさシリーズです。

 

この『あまがさ』というお話は、『からすたろう』の作者である、八島太郎さんの作品です。

 

これは、八島太郎さんの娘さん、モモを主人公にしたお話だそうです。

 

3歳のモモは、誕生日にもらったかさを、早くさしたくて、たまりませんでした。

 

しかし、お母さんはいつも、

 

「かさは、あめの ひまで とっときましょうよ。」

 

待つことの楽しさ。

それを心から味わってほしいと、お母さんは、モモに我慢をさせます。

 

素敵なお母さんです。

 

さて、ついに待望の雨が降りました。

 

お母さんはその日の朝、

 

―おきてごらん! おきてごらん!

とても いいことが ありますよ。

 

 

と言って、モモを起こしました。

 

モモの楽しみを一番に理解してくれて、一緒に喜んでくれるお母さん。

 

モモは、幼稚園の送り迎えの時に、かさをしっかり握って歩きました。

 

とおりは こんでいて にぎやかでした。

でも モモは、

こっそり じぶんに いいきかせました。

―わたし、

 おとなのひとみたいに、

 まっすぐ あるかなきゃ!

 

 

かさをしっかり両手で握ると、手はつなげません。

 

そうです、この日は、モモが初めてかさをさした日であり、初めてお父さんとお母さんと手をつながないで歩いた日になりました。

 

モモの自立心。

 

この、小さな小さな自立心が、子どもの心を大きくしていくのでしょう。

 

なんだか、とても素敵な日。

 

ただの雨の日が、モモのかさ初めて記念日で、初めて手をつながないで歩いた記念日。

 

モモは、大きくなって、このお話を少しも覚えていないけど、お父さんは覚えていました。

 

そして、素敵な絵本になりました。

 

モモとお父さん、お母さんの想い出は、いつまでも読み継がれていきます。