絵本・児童文学研究レポート

絵本・児童文学についての自由研究ブログです

探求心でいっぱい 『だるまちゃんとてんぐちゃん』

『だるまちゃんとてんぐちゃん』

加古里子 さく/え  福音館書店(1967)

(3~4歳頃から)

 

【あらすじ】

 だるまちゃんとてんぐちゃんはとても仲良し。だるまちゃんは、てんぐちゃんの持っているものと同じものがほしくて、おおきなだるまどんにおねだりします。しかし、おおきなだるまどんが出してくれるのは、どれもてんぐちゃんの思っているものとは少し違う・・。そのうち、だるまちゃんはいいことに気がついて、自分でてんぐちゃんと同じようなものをみつけ出します。

 

だるまちゃんのメンター的存在 てんぐちゃん

 

てんぐちゃんは、だるまちゃんにとって、一歩先を行く人。

 

うらやましい、てんぐちゃんのようになりたいな。

 

そんな存在が近くにいるということは、幸せなことだと思います。

 

私にも、小さい頃、そんな友達がいました。

本をたくさん読んでいる子で、手芸なども上手。

 

面白い本をたくさん教えてくれて、一緒に読み合いをしていました。

フェルトの人形やビーズ、プロミスリングなんかもよく作ったなあ・・・

 

その友達はお兄さんとお姉さんがいて、そんなところもうらやましかったりして。

 

その子が教えてくれることもたくさんあったけれど、影響を受けて、私もいろいろやってみようと工夫するきっかけを与えてくれた存在でした。

 

ありがたいことに、大人になってからも、素敵な友達に出会え、その子もまた私のメンター的存在です。

 

メンターは、人生やビジネスなどにおける指導者や支援者のこと。

 

その友達は、本が好きだったことを思い出させてくれました。

今、こうやって絵本・児童文学の勉強をするきっかけを与えてくれました。

 

読書家で、頭が良くて、物知りで、本当に優しくて。愛情にあふれていて。

 

そんな友達に出会えて、私は本当に幸せ者です。

 

私がだるまちゃんだとしたら、友達はてんぐちゃん。

物語の中でも、だるまちゃんは、てんぐちゃんのことが大好きで、おんなじものを欲しがります。

 

友達の持っているものは自分もほしい、という同一化の傾向です。

 

しかし、家に帰ってお父さんにお願いして、同じ(ようなもの)をたくさん出してもらいますが、おんなじものはありません。

 

でも、その中には、一つだけ違うものがありました。

 

それを見つけるのが、この作品の面白さでもあります。

 

3~4歳頃からの子ども達は、生活体験がどんどん拡大していきます。

 

母子一体期の頃の「おんなじ おんなじ」「いっしょ いっしょ」とは異なり、自分と異なるものを知っていく時期にもなります。

 

あそびや日常生活すべての中で、子ども達の探求心が刺激され、子どもの求める対象が、同一的なものから、異質なものへと変化していきます。

 

だるまちゃんが「気づいたこと」、「工夫したこと」。

 

それは、同じものへの認識、異なるものへの気づきです。

 

同じようになりたい。あの人のようになりたい。

でも、なれない。

 

そこから、どうしていくか。

 

子どもは探求心を働かせて、いろいろな発見をし、気づき、新しいものを生み出していきます。

 

他者や社会への窓口のはじめの一歩。

子どもの世界が広がります。

 

作者 かこさとしさんの探求心

 

だるまちゃんシリーズは、他にも、

『だるまちゃんとかみなりちゃん』

『だるまちゃんとうさぎちゃん』

『だるまちゃんととらのこちゃん』

『だるまちゃんとだいこくちゃん』

『だるまちゃんとてんじんちゃん』

『だるまちゃんとやまんめちゃん』

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『だるまちゃんとにおうちゃん』

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など、たくさんの種類があります。

 

作者のかこさとしさんは、つい先日亡くなられたのですが、なんと、昨年91歳で、だるまちゃんシリーズの最新作が3冊同時に刊行されたのです。

 

『だるまちゃんとはやたちゃん』

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『だるまちゃんとかまどんちゃん

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『だるまちゃんとキジムナちゃん』

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これら3冊は、東日本大震災福島原発事故の犠牲者の方々、沖縄の方々への思いが込められているそうです。

 

 

かこさとしさんの探求心

 

90歳を過ぎても、探求心を忘れず、様々な方々への思いを込めて創作活動をされている。

 

私もそんな人になりたい。

そして、近づく努力をしながら、自分の道も極めてみたい。

 

人や本から、素晴らしい出会いをいただき、成長する。

 

様々な人や本との出会いを大切に。

 

私の探求心も続きます。

 

参考文献

『絵本児童文学基礎講座Ⅰ すてきな絵本にであえたら』 

 工藤左千夫 成文社 (2004)