『どろんこ こぶた』
アーノルド・ローベル 作 岸田衿子 訳 文化出版局 (1971)
3~4歳頃から
【あらすじ】
こぶたは、おひゃくしょうさんのうちの、ぶたごやに住んでいました。こぶたが一番好きなことは、やわらかーいどろんこのなかに、すわったまま、「ずずずーっと」しずんでゆくこと。あるあさ、おばさんが大掃除をして、こぶたの大好きなやわらかーいどろんこまできれいにしてしまいました。怒ったこぶたは、うちを逃げ出してしまいます。しかし、いいどろんこはなかなかみつかりません。とうとう、大きな町まで来て、ついにどろんこを見つけます。うれしくて、すぐにどろんこにしずんでみたのですが、何かいつものどろんこと違うことに気づき・・・
こぶたの気持ち 子どもの気持ち
昨日に引き続き、「どろんこ」つながりで、今回は『どろんこ こぶた』を紹介します。
「どろんこ」
犬も、こぶたも、子どもも大好きです。
ちょっとひんやり冷たくて、何にでも大変身。
どろだんごだって作れるし、まっくろくろすけにだってなれちゃいます。
この『どろんこ こぶた』のこぶたは、温泉みたいに「ずずずーっと」つかるのが好きみたいです。
包まれている、安心感みたいなものがあるのでしょうか。
何もしないで、のんびり、休むというのも、とても大事な時間です。
こぶたにとって、「どろんこ」は宝物。
でも、おばさんにとっては、ただの汚いどろんこにしか、初めは見えませんでした。
子どもが大切に集めていたものを、ガラクタだと思って捨てられてしまうこと、よくありますよね。
小さい頃、大事なものを親に捨てられてしまったときは、本当に辛かったです。
おばさんが、おおそうじのついでに、こぶたをお風呂に入れて、きれいにリボンなんてつけてもらっているのですが、こぶたはなんとも不満げな表情です。
ぼくの好きなことはこれじゃない・・
これも、なんだかよくありそうな情景です。
よかれと思って、あれこれ手をかけすぎてしまうのです。
怒ったこぶたに共感する子どもたちが、もしかしたらたくさんいるかもしれません。
怒ったこぶたは、逃げ出して、どろんこ探しの旅に出ます。
しかし、なかなかみつからず、ついにみつけたと思ったどろんこはなんとセメント。
大失敗のこぶた。
みんなに注目されて、さらに悲しげな表情です。
セメントづけから助けてもらったこぶたは、おじさんとおばさんのうでのなかに、すとんととびこみました。
いろいろ冒険したいけど、がんばったら休む。
うちに帰ったこぶたは、
「すぐに、こぶたは、ぶたごやにかけこんで、まず ごはんを たべました。」
まずは腹ごしらえ。大事です。
「それから、だいすきな やわらかーい
どろんこの なかに すわりこんで、
しずかに ずずずーっと、しずんでゆきました。」
帰ってくることができた、安心感。
宝物のそばで、ゆっくり、おやすみなさい。