『どうぶつのおやこ』
藪内正幸 画 福音館書店 (1966) (0~3歳頃から)
【あらすじ】
この絵本には、「どうぶつのおやこ」が描かれています。ただ、それだけです。文字はありません。うさぎやいぬ、さる、くま、かば、キリン、ライオン、ぞうの親と子どもが描かれています。子をみつめる親、親にぴったり寄り添う子ども。それぞれの親子の一瞬を描いた、物語です。
ファーストブック 『どうぶつのおやこ』
「絵本は子どもがこの世で最初に出会う、耳で聞き、目で見る文学である。」
日本の児童文学作家であり、翻訳家、児童文学研究者である瀬田貞二さんの言葉です。
また、児童文学者の松居直さんは、『わたしの絵本論 0歳からの絵本』の中で、こう述べています。
「絵本は子どもが最初に出会う絵画、美術作品でもあるのです。」
ファーストブックとは、子どもたちが最初に出会う絵本のこと。
子どもが最初に出会う本が、素敵な本であったらと願います。
そんなファーストブックにぴったりの絵本『どうぶつのおやこ』
寄り添う親と子ども。
限りない幸せの瞬間が描かれています。
乳幼児期の子どもにとって、母親と子どもの一体感が重要な意味をもちます。
この感覚は、母親の体が一部であり、自分の一部が母親であるという心理的感覚です。
だから、ぴったり寄り添うことが非常に重要な安心感をもたらすのです。
母子一体感覚が強い時期に、あかちゃんだけの絵は不安になるといいます。
あかちゃんのそばには、必ず大人がいる。
『どうぶつのおやこ』に描かれる、その安心感。
触れ合いを楽しみながら、この絵本をたくさんの親子のみなさんが読んでくれたらいいなあと思います。
挿絵の素晴らしさ 藪内正幸さんの作品
この『どうぶつのおやこ』は、動物絵本画家の天才と呼ばれる、藪内正幸さんの作品です。
藪内さんは挿絵の仕事で、『グリックの冒険』『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』という「ガンバ三部作」と呼ばれる一連の作品を描いた方でもあります。
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私が、小学生の時に本を読んで初めて涙したあの『グリックの冒険』を描いた方だったとは!
お話とともに、挿絵が、私を物語の世界に入り込ませてくれたのだと、改めて思いました。
挿絵の素晴らしさ
絵本や児童文学の大きな特徴だと感じています。
子どもに本物を伝えたいという思い。
ごまかしが効かない子どもにこそ、本物を見せてあげたいと感じます。
参考文献
『絵本児童文学研究基礎講座Ⅰ すてきな絵本にであえたら』 工藤左千夫 成文社 (2004)
『わたしの絵本論 0歳からの絵本』松居直 国土社 (1981)