『銀のほのおの国』
中学・高校・一般~
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【あらすじ】
部屋の壁に飾られている剥製のトナカイ。ある時、たかしはその剥製にロープをかけて遊んでいた。呪文をかけてみると、トナカイのガラスのひとみの奥でほのおがかすかにゆれた。すると突然、ロープとともにぐんぐん壁穴に引っ張り込まれていき、トナカイは生き返って逃げて行った。たかしは妹のゆうこと共に突然、林の中へ紛れ込んでしまう。そこは、動物たちが人間と同様に話し、暮らしている国。たかしとゆうこは帰り道を探し、旅を続ける。そこでは、トナカイの「銀のほのおの国」再生に向けた、動物たちと青イヌとの壮絶な戦いが待っていた。日本で生まれた本格ファンタジー。
信じるものを選び取る『銀のほのおの国』
突然、動物たちの世界に迷い込み、トナカイと青イヌの戦いに巻き込まれたたかしとゆうこ。
「なぜ僕が・・・」
「早く帰りたい」
でも帰るにはどうしたらよいのかわからない。
帰る道を探すためにトナカイの行方を捜します。
どうして私がこんな目に・・・。
時に人はそういう場面に会うことがあるかもしれません。
そんなときにいかに自分を保ち続けるか、大変困難な課題であると思います。
旅を続けていく中でたかしは様々なことを思います。
うさぎのはね坊主が死んだとき、
「なんのために自分はこんな旅をし、何のために子ウサギは死んだのだろう」
戦いに傷ついたトナカイの少年を看病しているとき、
・・・かあさんがやられたと泣きじゃくったトナカイと、自分と、いったいどこがちがうというのだろう。
(ちがうのはこのトナカイが、いかにも誇らしくいのちを賭けて戦っているのに、ぼくは傷つくまいとしてかくれていることなんだ。)・・・
(だけど、ぼくは死にたくないさ。ゆうこは無事にここにいるけど、あいつをつれて家に帰らなくちゃならないんだ。ここで死ねるものか・・・)
たかしが、トナカイと青イヌの戦いに身をもって加わることもできたかもしれません。
しかし、それはできませんでした。
なぜなら、自分は帰らなければならない存在だったからです。
妹のゆうこを連れて、もとの世界へ。
生きて帰るということが、たかしの大切な使命でした。
たかしは旅の中で、死や裏切り、猜疑心など多くの困難な状況に出会います。
そして、荒野の掟である、
「生きるために他の生きものの死を前提としなければならない」現実を目の当たりにします。
しかしその中で、彼に手助けをし、食べ物を与えてくれる小さな生き物たちにも出会いました。
様々な状況を乗り越えた中で、「生きていくには、常に選択していかなければならないという厳しさがあること、そしてそれは自分を信じるということにつながっていくということ」をたかしは実感していきます。
戦いが終わり、無事に帰って来られた後、たかしはこう誓うのです。
(・・・いつかわからないある日、ぼくも大切なものを守るために、戦う日が来るかもしれない。・・・見ていてくれ、はやて。何が敵で何がほんとうで何がうそなのか、見分けることはむずかしくとも、ぼくは、きっと、信じるものを選びとるよ・・・・・・)
信じるものを選択していく力。
時には迷うこともあるでしょう。間違えることもあるでしょう。
しかし、その疑いをもちつつ、選択していくということが、生きていくということなのだと感じました。