『もりのなか』
マリー・ホール・エッツ 文/絵 まさきるりこ訳 福音館書店 (1963)
3~4歳頃から
【あらすじ】
ぼくは、かみのぼうしをかぶり、新しいらっぱをもって、森へさんぽに出かけました。すると、大きなライオンに出会い、ぼくのさんぽについてきました。二匹のぞうのこたちも、ぼくのさんぽについてきました。それから、くまたちや、カンガルーたち、こうのとり、二匹のさる、うさぎも、ぼくのさんぽについてきました。みんなで一休みした後は、“はんかちおとし”や“ろんどんばしおちた”、“かくれんぼう”をしてあそびました。「もういいかい!」とぼくは言って、目を開けると、どうぶつは一匹もいなくなっていて、そのかわりにおとうさんがいました。ぼくは、おとうさんのかたぐるまにのって、帰りました。
ぼくのファンタジー
『もりのなか』は、黒のコンテだけで描かれた、白黒の絵本です。
子どもの空想の世界なのでしょうか。
白黒で描かれているからこそ、読み手が様々に想像をふくらませることができ、その情景を鮮やかに描くことができます。
また、白黒であることで、私は少し懐かしくなるような、遠い昔に自分の心がもっていかれるような気がします。
ぼくのさんぽに、ぞろぞろと、何やら楽しそうだぞと、たくさんの動物たちがあとをついてきます。
ぼくは、らっぱを吹き、らいおんは吠え、ぞうははなを鳴らし、大きなくまはうなり、かんがるーはたいこをたたき、こうのとりは、くちばしを鳴らし、さるは大きな声で叫んで手をたたいています。
うさぎは、なんにも言わないで、ついてきます。
みんなそれぞれです。
ちょっと一休みしてから、またあそんで・・・
楽しい時間が流れていきます。
かくれんぼうをして、ぼくが「もういいかい!」と言って目を開けると、動物はいなくなっていて、代わりにおとうさんが出てきます。
おとうさんは、ぼくを探していました。
そのおとうさんが、ぼくにかける言葉が、素敵です。
「いったい だれと はなしてたんだい?」
優しいおとうさん。
空想の世界にひたっていた子に、寝言を言っているかもしれないその子に、こんな優しい言葉をかけてあげられるだろうか・・・
ぼくは、おとうさんのかたぐるまに乗って帰っていきます。
「さようならぁ。みんな まっててね。また、こんど、さんぽにきたとき、さがすからね!」
約束をして、もりのなかをあとにします。
静かな余韻が広がります。
続きは『また もりへ』