『泣き虫ハァちゃん』
5~6年生頃から
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【あらすじ】
ハァちゃんは、城山家の男ばかりの6人兄弟の5番目。「どんぐりころころ」の歌詞の意味を知り、どんぐりの行方を案じて泣いてしまうような、感受性豊かな男の子だ。あたたかい子ども思いの両親、仲の良い兄弟に囲まれ、丹波篠山の大自然の中でのびのびと過ごす。臨床心理学者、河合隼雄の遺作となった、自伝的小説。
「ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ」
ハァちゃんは、泣き虫で、感受性豊かな男の子。
「何かの加減で体中がじーんとなってくると、もうたまらない」。
ハァちゃんが小さい頃、弟のあきちゃんがふたつで亡くなりました。
お母さんは仏壇の前で毎日泣いていましたが、ハァちゃんはいつもお母さんの傍にいて、お母さんと一緒に泣いたり、御詠歌をあげる真似をしたりしていました。
どんぐりころころの歌の意味を知って、どんぐりの行方を案じ、涙を流してしまうハァちゃん。
弱いものに寄り添い、共感する力が幼い頃から備わっていたのでしょう。
臨床心理学者、河合隼雄の心の豊かさが表れるエピソードです。
そんなハァちゃんの人間性は、自然豊かな兵庫県・丹波篠山の豊かな自然の中で、あたたかい父母や仲の良い兄弟たちに囲まれながら、育っていきました。
「ハァちゃん、ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ。」
と言ってくれるお母さん。
サンタさんに、「お父さんも自分にプレゼントを頼むことにした」というお父さん。
山や川を駆け回り、小さい弟も輪の中に入れて遊ぶ、仲のよい兄弟。
その人の原点というのは、やはり生まれ育った土地や家族に大きな影響を受けるのだと感じずにはいられませんでした。
そして、小さな頃の漠然とした不安や孤独感、「冬の時代」。
誰の身にも起こるような、心の揺れ。
それらが丁寧に描かれているということは、その時代の自分自身に一途に向き合ってきた証拠なのでしょう。
ハァちゃんの思い出とともに、自分自身のせつなく、ちょっぴり恥ずかしくなるような思い出が蘇ってくるようです。