絵本・児童文学研究レポート

絵本・児童文学についての自由研究ブログです

ゆっくり人の後を『のろまなローラー』

『のろまなローラー』

 小出正吾 作 山本忠敬 絵 福音館書店 (1965)

 3~4歳頃から

 

【あらすじ】

 ローラー車のローラーは、重い車をごろごろ転がし、道を行ったり来たりしています。大きなトラックに「じゃまだ」と言われたり、りっぱな自動車に笑われたりしながら、どんどん追い越されていきます。笑われ、ばかにされながらも、でこぼこみちを平らにきれいにしていくローラー。坂道を登っていくと、さっき追い越されたトラックや自動車たちの姿。でこぼこみちでパンクになってしまったようです。ローラーは優しく声をかけてから、でこぼこ道を直していきます。トラックや自動車たちは、ローラーのおかげで道がきれいになっていることに気づきました。パンクが直ったら、今度はお礼を言って通っていきました。がんばるローラーのお話です。

 

 

ゆっくり、一歩一歩、着実に

 

ローラーは足の遅い自動車。

 

みんなに笑われて、ばかにされることもあるけれど、一歩一歩着実に、でこぼこ道をきれいにしながら、前へ進んでいきます。

 

このお話を読んで、私は、絵本作家ヨシタケシンスケさんの『ヨチヨチ父 ―とまどう日々―』に描かれている、ある一場面を紹介したくなりました。

 

『ヨチヨチ父 ―とまどう日々―』は、ヨシタケシンスケさん自身の子育て経験を基にして描かれた育児イラストエッセイです。

 

 

笑える、共感できるシーンがたくさんあり、子育て中の方はもちろん、プレパパ・ママさんたちにもおすすめです!

 

『ヨチヨチ父 ―とまどう日々―』の中の「人生のピーク」という場面で、ヨシタケさんはこう述べています。

 

わが子の発育ペースがほかの子とくらべてゆっくりだと、やっぱりちょっとあせりますよね。

 

ヨシタケ家の家訓には、「人生のピークは遅い方がいい」というものがあります。

 

私の周りの「元・神童」たちが、皆その後パッとしないことと、私自身の経験から、「ゆっくりとした右肩上がり」が一番幸せなんじゃないか、と思うからです。

 

ゆっくりと人のあとを追いかける人生。その目線から身に付けるやさしさやしなやかさって、いい人生を送る上でとても有利に働くハズなのです。

 

 

 

すごく安心できる、共感できる考え方だなあと思いました。

 

時には人と比べてしまうこともある。

追い越されて悔しいこともある。

 

しかし、そこから見える視点というのを大切にしたいと思います。

 

ローラーの、その人の自身の、健気で一生懸命な姿。

ヨシタケさんの、お父さんの、周りの人たちの、見守るまなざし。

 

ゆっくり、一歩一歩、着実に。

 

安心して、前に一歩進む力をくれる作品です。

 

 

参考文献

『ヨチヨチ父 ―とまどう日々―』 ヨシタケシンスケ 赤ちゃんとママ社 (2017)