マイケル・ボンド作 ペギー・フォートナム画 松岡享子訳 福音館書店(1967)
(小学校3~4年生頃から)
【あらすじ】
ブラウン夫妻は、駅のプラットホームで一匹のクマをみかけます。スーツケースに腰をかけ、首から札を下げていました。礼儀正しく夫妻にあいさつするそのクマは、暗黒の地ペルーからやってきたといいます。札には「どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします」と書かれてあります。放っておけないブラウン夫妻は、そのクマと一緒に暮らすことを決めました。クマは、夫妻と出会った駅の名にちなんで「パディントン」と名付けられました。それから、パディントンのロンドンでの生活が始まります。
あたたかい家族や友達の存在 戻る場所があるから何でもできる
ブラウン夫妻はパディントンをペットやぬいぐるみとしてかわいがるために家に連れて帰ったのではありませんでした。
パディントンを連れて帰ってきたとはいえ、これからいったいどうすればいいのだろう。
そんな家族会議の中で、ブラウンさんは
「いったい、クマには、どのくらいおこづかいをやればいいものか、見当もつかん」
そこで奥さんは
「週一シリング六ペンスでよろしいわ。ほかの子たちと同じように」
と答えるのです。
西洋的な考えです。
自立的に育てようと考えているのだと。本当の娘や息子のように。
一人の人間として、パディントンはブラウン家に受け入れられました。
初めてのお風呂のときもひとり。
「きっと、一生にまたとない思いを味わってるんだろ。」
とブラウンさん。
当のパディントンはといえば、溺れかけていたわけですが・・・
安心して、信頼して、見守ってくれる場所、帰る場所があるということ。
待っていてくれる家族がいるということ。
それがあるから、様々なところに興味をもってチャレンジしに行けるのではないでしょうか。
いつも何かやらかしてしまうけど、パディントンのまわりには、たくさんの優しい人たちであふれています。
おだやかでのんびり屋のブラウン夫妻。
優しく面倒を見てくれる、娘さんのジュディ。
パディントンがお風呂を水びたしにしてしまったとき、
「すごいな!ひとりでこれだけめちゃくちゃがやれるんだもんな。ぼくだって、まだこんなにひどいことはやったことないぜ。」
そう認めてくれる息子さんのジョナサン。
パディントンの好きなママレードを余分に買ってくれるブラウン家の家政婦、バードさん。
「ブラウンのだんな」
そう親しみをかけてよんでくれるのは、大の仲良しグルーバーさん。
グルーバーさんは、パディントンを一人前の人として認めて、付き合ってくれる人。
「お十一時」のお茶を一緒に共にする、仲間。
一日終わればいつもぐっすりのパディントン。
朝起きたら、ママレードのパンが用意されていたら・・・もう最高ですね。