絵本・児童文学研究レポート

絵本・児童文学についての自由研究ブログです

言葉のリズムを楽しむ『さよなら さんかく』

『さよなら さんかく』 

わかやまけん 文・絵 こぐま社 (1977)

0~3歳前後から

 

【あらすじ】

言葉のリズムを楽しみながら、連想ゲームをしていきます。「さよなら さんかく またきて しかく」「しかくは なあに しかくは なあに」「しかくは とうふ とうふは しろい」。思いつくものたくさん描いて・・・さいごは おばけ。おばけまで つながるかな?「おばけは ぐにゃぐにゃ とんでった」「さよなら さんかく またきて しかく」。

 

 

子どもへの読み聞かせにおすすめ 言葉のリズム

 

私が特別支援学校の教員だった頃、個別の学習の時間に、この絵本を学習に取り入れたことがあります。

 

発語が少ないお子さんと、楽しみながら、言葉の学習ができるようにするためです。

 

初めのうちは、私が読み聞かせをしていました。

お話に親しんでくると、子どもたちは、自分から読んでくれるようになりました。

 

初めは、ゆっくり、文字を追って。

それが、徐々に、「しかくは なあに しかくは なあに(?)」と、こちらに問うような形で読めるようになってきました。

 

担当しているもう一人の子と一緒に「これだ!」と、こぐまちゃんたちが持っているものや、あそんでいるものを探し当てながら楽しみました。

 

「しかくは とうふ」「とうふは しろい」「しろいは なあに しろいは なあに」「しろいは ぼーる ぼーるは まるい」

どんどんリズムがついてきて、文字が意味のある言葉になっていきました。

 

その子は、内言語がとても豊かで、やさしい気持ちをもっている子でした。

ですが、うまく自分の気持ちを伝えられなくて、怒ってしまったり泣いてしまったりすることも少なくなかったです。

 

自分の言葉できちんと気持ちを伝えられるようになると、少しずつ気持ちも安定してくるようでした。

 

この読み聞かせを通して、楽しみながら、伝わる楽しさなどを感じてもらえていたら、うれしいです。

 

『さよなら さんかく』の言葉あそびのひみつ

 

『さよなら さんかく』の言葉あそび。

 

「しかくは なあに しかくは なあに」

「しかくは とうふ とうふは しろい」

「しろいは なあに しろいは なあに」

「しろいは ぼーる ぼーるは まるい」

 

 

本文は、このようなパターンで続いていきます。

ここに、とてもおもしろいひみつが隠されているのです。

 

しかく(形)→とうふ(物)→しろい(色)、

しろい(色)→ぼーる(物)→まるい(形)

 

この作品は、形→物→色、色→物→形をリズミカルに繰り返しています。

 

この形→物→色、色→物→形は子どもの認知のプロセスです。

 

子どもの認知は、様々な感覚の刺激を受けて発達していきます。

視覚や触覚で「色」や「形」、「大きさ」をとらえていく。

 

そこに、この絵本では、言葉のリズムが加わっています。

「繰り返し」

遊びとしての循環です。

 

言葉あそびをしながら、子どもの言葉が育っていきます。

 

言葉は人と人とをつなぐものです。

 

自分の言葉で伝えられること、自分の言葉をわかってくれる人がいるということ。

 

受け止めてくれる相手がいる。

そういう子どもと親の一体感が、子どもの心を満たしていくことにつながっていくのではないでしょうか。

 

子どもの基礎の根っこの部分です。

 

言葉のシャワー 

毎日、やさしく、ふりそそいで。

 

参考文献

『絵本児童文学基礎講座Ⅰ すてきな絵本にであえたら』 工藤左千夫 成文社 2004