『わすれられないおくりもの』
スーザン・バーレイ 作・絵 小川仁央 訳 評論社 (1986)
5~6歳頃から
【あらすじ】
かしこくて、いつもみんなから頼りにされていた、優しいアナグマ。年をとっていたアナグマは、トンネルの向こうへ旅立ちます。森のみんなは、アナグマの死を悲しみます。冬が終わり春になると、みんなは、互いにアナグマとの思い出を語り合います。アナグマのくれた、わすれられない大切なおくりもののお話。
老人のくれた知恵や優しさ『わすれられないおくりもの』
『わすれられないおくりもの』では、老人のアナグマが、若いみんなに慕われていた様子が描かれています。
そのアナグマの「存在感」
老人というのは「存在」の象徴です。
そこにただいてくれているだけで、安心できる、そんな存在。
そして、老人の「包括性」
誰に対しても分け隔てなく接し、自分の知恵や工夫をおしみなく伝えています。
老人というのは、「死」の象徴でもあります。
死にとても近い存在です。
アナグマは死ぬことをおそれていませんでした。
死んで、からだがなくなっても、心は残ることを、知っていたからです。
アナグマは長いトンネルの向こうへ行ってしまいました。
みんなの心の中は悲しみでいっぱい。
でも、それだけではありませんでした。
時間の経過の中で、みんなはアナグマの死を受け入れ、アナグマとの思い出を語れるようになっていきました。
丁寧に教えてくれたこと、ずっと優しくそばにいてくれたこと。
みんな、それぞれにあるアナグマとの思い出。
アナグマは、ひとりひとりに、別れたあとでも、たからものとなるような、ちえやくふうを残してくれたのです。みんなはそれで、たがいに助けあうこともできました。
アナグマのおくりものは、みんなの心の中にずっと生き続けていきます。