絵本・児童文学研究レポート

絵本・児童文学についての自由研究ブログです

自然の美しさ『よあけ』

『よあけ』

 ユリー・シュルヴィッツ 作・画 瀬田貞二 訳 福音館書店  (1977)

 5~6歳頃から

 

【あらすじ】

 音もなく、静かな夜明け。寒く湿ったみずうみ。月のきらめき。そよかぜによるさざなみ。かえるのとびこむ音。おじいさんと孫は、湖に漕ぎ出す。やがて、山と湖が、緑に染まる。

 

自然の美しさ

 

夜が明ける少し前の静けさ。

 

すっと心が引き締まるような、あの空気が好きです。

 

『よあけ』では、湖を舞台に、夜が明けていく美しさを描いています。

 

月明かりの静けさの中で、眠るおじいさんと孫。

 

その静けさの中で、かえるの飛び込む音や、鳥の鳴き声が気持ちよく響きます。

 

おじいさんが孫を起こす手のぬくもり。

 

焚いた火のあたたかさ。

 

美しい静かな情景の中に、音を感じ、ぬくもりを感じます。

 

そして、山と湖が、みどりになる場面。

 

湖が美しいから、空気が澄んでいるから、太陽の光が山に照らされて、湖に鮮やかに映るのでしょう。

 

この絵本の作者ユリー・シュルヴィッツは、東洋の文芸・美術にも造詣が深く、この

『よあけ』のモチーフは、唐の詩人である柳宗元の詩「漁翁」によっているそうです。

 

漁翁が、山水の風景にとけこみ、自然の一部になっている様子。

船をこぐ音だけが、山々に響き渡っている情景。

 

清らかな自然とともにある日常の豊かさ。

 

漢詩の心と絵本が織りなす、自然の美しさです。